Brazil Journey

現代に息づく 一本の糸と針でつくる ブラジルの手編みレース

2020.12.21



ブラジルの伝統工芸、「レース」。それは世界に知られざるブラジルを代表する手仕事である。

ルネッサンスレースの地を訪ねて


2015年と2016年2度に渡りブラジル北東部のレース編みの地を訪れた。

ヨーロッパからの移民と共に、ブラジルには様々なレース編みの技法がもたらされた。
ボビンレース、フィレレース、ルネッサンスレースなどで、中でも、一本の糸と針を使って編み上げるニードルレースの技法を使った、ルネッサンスレースの美しさは目を見張るものだ。編まれている地域も、パライーバ州のカリリやペルナンブーコ州のポサン周辺の限られた地域のみで、いずれも都市部から離れており情報も少ない地域の為、とにかくは電話でレース編み職人を当たってみた。ポサンのレース編み協同組合の組合長を務めるソコーホさんと連絡を取ることができた。ソコーホさんは組合員が編んだレースをカゴに入れて、毎週レシーフェの物産店に納品に通う。その日はカーサ・ダ・クルトゥーラで待ち合わせて、彼女の帰宅時に同行してポサンを訪れることに。昼前にレシーフェを出発。電車、バス、乗合いタクシーを乗り継ぎポサンに到着した時には夜が暮れていた。

現代に息づく手編みレース


ニードルレースの技法はポルトガル人移民によりレシーフェにもたらされ、1930年代にこの地に伝わった。16世紀にヨーロッパで盛んに編まれていたため、ブラジルの地でルネッサンスレースと名付けられた。夫が酪農や農業をする傍、女性達はレース編みで生活を支えてきた。今でもこの地では多くの女性達の収入源となっている。ポルトガル語でレースをRENDA(ヘンダ)と呼ばれるようになった所以である。10センチ四方を編むのに1日かかる。作品のサイズによってはグループで取り組み、4ヶ月、1年かかるものもあるが、編み子さん達はレースを編んでいる時が一番リラックスできる時間だと口を揃えて言う。自分達が編んだ真っ白なレースを誇らしげに広げて見せてくれたのが印象的だった。

現在本家ヨーロッパでは職人は数少ない高齢の方のみで、中国の奥地で編まれている以外は世界でも見られなくなってきているようだ。現役の編み子さん達が盛んにレースを編んでいるブラジルは、世界中でも最後の場所なのではないだろうか。
コロナ禍で現地のレースの売上が90%以上落ち込んでしまったと先日連絡があった。ポサンを訪れた時は編み子さんのお宅に滞在し楽しい時間を過ごした。あれから5年細々と取引を続けてきた。自分が今できることは何か考える日々だ。



当時レース編み協同組合の組合長を務めるソコーホさん


レース編み協同組合にて。現在協同組合は解散して個々で手仕事をしている

関連コラム:



Facebook:coloridas コロリーダス
インスタグラム:coloridas_brasil_tokyo
ビオジュエリー特設インスタグラム : coloridas_biojewelry


  • このエントリーをはてなブックマークに追加